
\セミナーを見逃してしまった方へ/
企業の新卒採用をより効果的に進めるためには、学生の価値観や志向性を理解することが不可欠です。特に、労働市場の変化や多様な働き方のニーズに対応するためにも、企業は積極的に学生の就業観やキャリア志向の把握に努めることが求められています。
今回のWORKS REVIEWでは、就活支援の最前線にいる、東京科学大学 守島氏、大阪大学 家島氏をお招きし、27卒学生のリアルな志向や活動の傾向についてうかがいました。
また、就職活動が早期化・長期化している現状について、大学側の視点を交えながら議論を展開すると共に、夏インターンシップの傾向や学業との両立に対する課題、そして学生・大学が望むインターンシップの在り方についてお話しいただきました。
INDEX
◆ 「27卒学生意識トレンド調査」から読み解く27卒学生の志向
【WORKS REVIEW 実施内容】
- 学生の志向/活動状況
- 学生の企業選びの基準
- 学生/キャリアセンターが望むインターンシップとは
- 大学が学生に提供する支援活動の内容
- キャリアセンターから企業に求めること
◆大学のキャリアセンターに聞く~27卒学生の志向/活動の特徴と対応のポイント~詳しい内容は「アーカイブ配信」で!
◆ 「27卒学生意識トレンド調査」から読み解く27卒学生の志向
ワークス・ジャパンが2025年3月に実施した「27卒学生意識トレンド調査」では、調査時点(大学2年生の3月)で、1day仕事体験や複数日程のインターンシップなどに「すでに参加した」と回答した学生は、全体の約20%弱でした。
– 学生の動き出しは早期化
インターンシップへの参加を検討し始めた時期については、「大学2年生の10月~3月」と答えた学生が最多となり、企業情報の収集に向けて早期から動き出している様子が見て取れます。
本結果より、早期からの学生の興味・関心を喚起する工夫や志望度を高める取り組みが、企業の採用活動の成否に影響を与える可能性があると考えられます。

– 「社風が自分に合う」かどうかが企業選びのポイント
企業選びで重視する項目を問う設問では、半数以上の学生が「社風が自分に合っているか」「やりたい仕事ができるか」と回答しており、次に「自分が成長できる機会や支援する制度があるか」が続きました。

– 転勤・給与や働き方など、リアルな情報を求める傾向
また、学生が挙げる企業側への要望としては、「転勤や給与など、働き方の実態を知りたい」「インターンシップが選考に有利なのか否か明確にしてほしい」「良い面だけでなく、大変なことや苦労話も聞きたい」などの声が多く寄せられました。

企業選びで重視する項目や学生が挙げる企業側への要望に対する回答から、学生は企業が発信する情報に対し、よりリアルで正直な内容を求めていると推察されます。
調査結果の詳細を確認したい方は、下記記事をご覧ください。≫ 「27卒学生の就職活動における意識調査」
◆ WORKS REVIEW 実施内容
ワークス・ジャパンが実施した「27卒学生意識トレンド調査」では、約半数の学生が2年生の秋ごろからインターンシップへの参加を検討し始めるなど、活動の早期化が顕著に表れる結果となりました。
一方、学生の就職活動の早期化は、学業への影響が危惧されています。加えて、働くことへの理解が低い状態での就職は、早期離職に至る懸念が高まり、結果的に企業の損失につながる恐れがある点も指摘されています。
そこで今回は、東京科学大学 守島氏と大阪大学 家島氏をゲストにお招きし、WORKS REVIEWを実施。
学生の就職活動の現状や早期化が及ぼす学生の就職活動と人材育成への影響など、教育機関の視点から詳説いただきました。
※出演者情報はセミナー開催時点(2025年3月28日)のものです。
\セミナーを見逃してしまった方へ/
出演者

東京科学大学
学生支援センター 未来人材育成支援室
マネジメント教授
守島 利子 氏

大阪大学
キャリアセンター 副センター長/准教授
家島 明彦 氏
大阪大学にキャリアセンターを立ち上げ、
副センター長・准教授としてキャリア教育と就職支援に従事。
専門は生涯発達心理学とキャリア教育学。
公認心理師(国家資格)、キャリア・カウンセラー、日本キャリア教育学会常任理事、島根県ふるさと親善大使、俳優など様々な資格と肩書を持つ。
大学のFD研修、高校のキャリア教育講演、自治体の市民講座、企業のコンサルなど幅広く活動している。
海外視察経験多数で、世界のキャリア教育支援動向にも詳しい。
学生の志向/活動状況
-
東京科学大学
守島 -
旧東工大では、学部から修士課程に進学する学生が85%程度を占めるため、キャリア相談の対象は修士の学生が中心です。近年の就職活動の傾向としては、やはり早期化が顕著に表れていると感じています。
今年の3月初旬に26卒学生向けの合同企業説明会を実施しましたが、驚いたことに27卒にあたる学部4年生も多数参加していました。参加した学部生の多くは、夏以降のインターンシップ参加を見据え、学部生のうちから企業や仕事内容に関する情報を掴んでおこうという考えを持っており、学部4年生の段階から動き始めているようです。
-
大阪大学
家島 -
11学部15研究科を擁する大阪大学では、学問領域によって多少の傾向の違いはあるものの、特に低学年層からのインターンシップ準備に関する相談が増加しています。
従来、キャリアセンターへの相談件数は、選考直前である1月~3月頃がピークでした。しかしここ最近は、4月~6月頃の相談件数が伸長しています。また、内容もインターンシップ選考への対策やエントリーシートの添削など、インターンシップに対する備えに関連する相談が中心になっており、早い段階から情報収集などに取り掛かっている学生が増えています。
-
東京科学大学
守島 -
東京科学大学が過去3年間(22卒~24卒)の卒業生を対象に実施したアンケート調査でも、早期化の傾向は明らかに見て取れます。24卒の場合、初めてエントリーシートを提出した時期を問う設問では、約46%が「年内(12月まで)」と回答しました。また、就職活動解禁とされる3月以前までに内々定を得た学生は、約3割に達する結果となりました。
さらに、本調査では、活動期間が長期化している傾向も表れていました。22卒では3ヶ月程度で活動を終える学生が多かったのに対し、24卒では6ヶ月、10ヶ月、12ヶ月がボリュームゾーンとなっており、学生の活動期間が長期化している様子がうかがえます。
-
大阪大学
家島 -
学生からは「研究に専念したいため、就職活動を早く終わらせたい」という声も聞かれ、早く内々定を得て安心したいという心理状況が読み取れます。
一方で、早期に内々定を得た後も、「本当にこの企業で良いのか」という不安からか、より良い選択肢を求めて就職活動を継続する学生も少なくありません。
当然、より希望にマッチする企業から内定を得られた場合、早い段階で内々定を獲得した企業の内定を辞退するケースもあります。早くに内定を出し学生を囲い込む行為が、結果的に内定辞退の多発を引き起こす要因になっているようにも思われます。
学生の企業選びの基準
-
東京科学大学
守島 -
本学は修士まで進む学生が多いことから、自身の専門性を活かしたいという意向を持つ学生が大半を占めます。しかし、学生の選択肢は多様化しており、かつてはメーカーの研究職や技術職が主流だったところ、近年ではコンサルティングファームやシンクタンク、SIerなどの業界に関心を持つ学生が増えています。
また、勤務地を重視する傾向も顕著であり、「関東圏で働きたい」「転勤は避けたい」などの希望が、東京に本社を構え、比較的転勤が少ないとされるコンサルやSIerへの人気につながっていると考えられます。
-
大阪大学
家島 -
大阪大学では、学部生の約56%が近畿圏出身であることから、学生からは「できれば近畿圏で就職したい」という声をよく耳にします。もちろん、東京に本社を構える企業が多いことは理解しており、初期配属の際に近畿圏から離れることはある程度覚悟しているようです。
また、地方出身の学生からは「地元に戻って貢献したい」という声も聞かれます。今の学生たちは高校・大学時代に震災やコロナ禍を経験した世代であり、過去の経験が企業選びにも影響しているのかもしれません。
「自分のやりたい研究や仕事ができる企業が地元にあれば、ぜひ戻りたい。もしなければ、まずは大都市の企業で経験を積み、将来的には地元に貢献したい」など、自身のキャリアと故郷や家族とのつながりを重視する学生が増えている印象を受けます。
学生/キャリアセンターが望むインターンシップとは
-
東京科学大学
守島 -
インターンシップに求める内容は、活動のフェーズによって異なると考えています。企業や業界を探し始める初期段階であれば、企業説明会のような短時間のプログラムでも情報収集の機会として有効でしょう。 一方、ある程度志望が固まり、企業理解を深めたい段階になると、働く様子をリアルに知れる体験型プログラムが好まれるようです。
本学の調査でも、24卒学生の約25%が7日間以上のインターンシップに参加しており、業界・仕事への理解を深められるインターンシップへのニーズが高まっている様子がうかがえます。実際に、困難な課題を与えられ、苦労しながらも社員の方々と協力して乗り越えた体験をしたインターンシップでは、学生も「働くことのリアルを知ることができた」と、高い満足度を示していました。
一方、短時間で会社説明を行い、その後、企業理解につながらないテーマでグループディスカッションを実施したプログラムに対しては、「時間の無駄だった」など、学生の率直な声が聞かれました。
たとえ短期間のプログラムだったとしても、企業理解につながるテーマ設定や目的の明確化が重要だと考えられます。
-
大阪大学
家島 -
インターンシップには、大学の授業のように“シラバス”、つまり到達目標や学べる内容が明確に示されるべきだと考えています。現在のインターンシップは、「楽しそう」「報酬が出る」などの動機で選ばれるケースが多く、本来の目的からズレてしまっている側面があります。
理想的なインターンシップの活用法は、学生が事前に業界研究を行い、志望する企業群を絞り込んだ上で、「A社、B社、C社の中で、自分に最も合う企業はどこか」を見極めるために参加することです。そのため企業は、インターンシップを単なる会社説明や選考の場として位置付けるのではなく、学生が自社の業務や文化を深く理解できる機会と捉え、プログラムを設計する必要があるでしょう。
例えば、特定の社員に同行して実際の業務を見学する「ジョブシャドウイング」のような形式は、学生が働き方を具体的にイメージする上で非常に有効だと考えます。手取り足取り教える必要はなくとも、社員の日常業務に触れることで、多くの学びが得られるはずです。企業には、インターンシップを通じて学生に何を身につけてほしいのかを明確にし、質の高いプログラム設計をお願いしたいと考えています。
大学が学生に提供する支援活動の内容
-
大阪大学
家島 -
大阪大学キャリアセンターでは、以前から企業様と連携した多様な企画を実施してきました。具体的には、化粧品メーカー様と協力した「身だしなみ講座」や、酒類輸入会社様との「お酒のマナー講座」などが、例として挙げられます。企業様と連携した企画は、今後も継続・発展させていきたいですね。
また、最近では『キャリア教育キャラバン』と呼ばれる取り組みを開始しました。キャリア教育キャラバンは、「インターンシップほど時間や労力をかけずに現場の雰囲気を知りたい」という学生のニーズに応えた取り組みであり、企業の本社や工場などを見学するツアー形式の企画です。
企業の裏側を知ることで、学生は一つのサービスが多様な専門職によって支えられていることを学び、「自分の専門を活かせるかもしれない」と視野を広げるきっかけを得ています。このように、深く企業を知ることで、先入観にとらわれず自身の可能性を発見できるフィールドワーク型の企画を今後も展開していきたいと考えています。
-
東京科学大学
守島 -
本学でも、企業様と連携した講座の実施など、積極的に産学連携を推進しています。また、近年増加している学生からのキャリア相談に対応するため、相談の予約枠を増やすなど、地道な改善も続けています。
インターンシップ関連では、今年も5月初旬にオンライン形式で約120社の企業様にご参加いただく『インターンシップ・業界説明会』を企画しています。本企画はインターンシップ準備のためと銘打ってはいますが、学生が早期に業界や企業を知るための重要な機会と位置付けています。
キャリアセンターから企業に求めること
-
東京科学大学
守島 -
年々活動開始時期が早まり、学生が本来時間をかけるべき学業や研究への十分な時間確保が難しくなりつつあります。大学としては、世界でリーダーシップを発揮できる人材を育成するためにも、学生が腰を据えて学び、研究に打ち込める環境を守りたいと考えています。
専門分野の知識だけでなく、物事の捉え方や粘り強く取り組む力といった、社会で活躍するために不可欠な素養は、大学での学びを通じて培われます。 採用難の状況は理解していますが、大学での学びの時間を十分に確保させることが、結果的に企業にとっても有為な人材の獲得につながるはずです。
大学を信頼していただき、人材育成の一端を任せていただけると幸いです。
-
大阪大学
家島 -
採用担当者の皆様が目標人数の達成や内定辞退防止といったプレッシャーの中で、大変なご苦労をされていることは承知しております。一方で、人事や採用に関する専門的な知識を持たず、採用業務を推進しているケースも見受けられます。
今後は、企業にとっても採用・育成領域に専門人材を配置し、体制の強化に努めることが、より必要になってくるでしょう。
そして、採用活動そのものよりも、入社後の育成により一層力を入れていただきたいと考えています。「どのような人材が入社しても、自社で責任を持って育てる」という気概があれば、採用活動における過度な早期化やスキル偏重といった課題も緩和されるかもしれません。欧米で主流となりつつあるスキルベース採用も、見方を変えれば育成の余裕がなくなった結果ともいえるでしょう。今の採用の在り方が日本の社会や文化に本当に合っているのか、再考の余地があるのではないでしょうか。
ぜひ、採用から育成へと視点を広げ、大学との連携を深めていただければと思います。
大学のキャリアセンターに聞く~27卒学生の志向/活動の特徴と対応のポイント~ 詳しくはアーカイブ配信で!
<その他、こんなこともお話しています!>
◆ 2027年卒学生が育った環境や体験した社会の変化
◆ 初任給の引き上げに対する学生の反応
◆ 学生が業界・企業情報を収集する際に利用するサービスや支援
当日お話しいただいたWORKS REVIEWの動画をアーカイブで配信しています。
早期化が懸念視されている新卒採用について、大学のキャリアセンター視点からの情報が発信されています!ぜひご視聴ください。
【アーカイブ配信対象】
収録日: 2025/3/28テーマ: 大学のキャリアセンターに聞く~27卒学生の志向/活動の特徴と対応のポイント~
≫≫ アーカイブ視聴はこちらから
おすすめ
コンテンツはこちら
Recommend
大学院修了後、人事・教育分野のコンサルティング会社に入社。
その後、短期大学の講師、公立大学の職員(キャリアカウンセラー)を経て、2010 年から東京工業大学で特任教授として修士学生を対象としたキャリアの授業を担当すると共に、全学の学生を対象としたキャリア相談を実施。
2023年から現職。他大学でも、キャリアガイダンス等で講演を行う。