採用活動
オンライン

「2022新卒採⽤展望」を開催しました。 第2部「22採⽤戦線、何をすべきか|大阪大学×日本経済新聞社」

出演者

家島 明彦 氏

大阪大学 キャリアセンター
副センター長 准教授

家島 明彦 氏

大阪大学にキャリアセンターを立ち上げ、副センター長・准教授としてキャリア教育と就職支援に従事。専門は生涯発達心理学とキャリア教育学。大学のFD研修、高校のキャリア教育講演、自治体の市民講座、企業のコンサルなど幅広く活動している。

村山 浩一 氏

日本経済新聞社 
デジタル事業メディア
ビジネスユニット
人材・教育編集長

村山 浩一 氏

新卒で日本経済新聞社に入社。記者として、主に産業界、資本市場、株式公開、投資ファンドを取材。「人材教育事業局 教育コンテンツ部長 兼 日経カレッジカフェ編集長」や「デジタル事業Nブランドスタジオ 日経BizGate編集長」などを経て現職。

成瀬 仁美

株式会社ワークス・ジャパン
人材プロモーション事業本部 プロモーション部 PR2課

成瀬 仁美

2010年株式会社ワークス・ジャパン入社。企業の新卒採用支援の一環として、主に採用プロモーション/選考管理システムの営業・企画を担当。入社時から営業職に従事。

Question①
コロナ禍で学生はどのような不安を抱いていたか?大学はどのような対応をしたか?

家島 家島
この話は1年生・2年生・3年生・4年生で分けて考えなければいけないと思います。1年生に関しては、友達ができない、大学に一度も登校できないという不安が多かったように思います。2年生に関しては、オンライン授業化に伴う環境の変化や、課題が多くなった状況に対する適応のところで不安が多く、3年生に関しては、就活の前段階としてのインターンシップがオンラインになったところに不安があったと思います。4年生に関しては、就職活動で内定が決まりましたが、本当にその内定先で良いのか、という不安が相談室によくあるようです。
それぞれに対して大学がどうしたかというところですが、大阪大学で言いましたら1年生向けに少しでも大学になじんでもらうため「阪大ウェルカムチャンネル」というものをYouTubeで配信したり、歓迎会ということで密を避けた形で小規模に分けて新入生が集う会を設けたりしました。2年生向けのオンライン授業化への対応に関しては、情報環境の状況調査をして、Wi-Fiが無い学生に対してはモバイルWi-Fiを貸し出すなど、経済的な支援、機器的な支援を行いました。またインターンシップに行きたい3年生、就職が決まっていない4年生には、昨年度のセミナーやガイダンスの動画をオンライン視聴できるようにしました。まだ内定が決まっていない4年生に対しては、4年生対象の説明会やイベントを今後も企画しています。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。1年生向けの「ウェルカムチャンネル」は具体的にどのようなコンテンツなのでしょうか?
家島 家島
これは全学教育推進機構という私が兼任している教養教育担当の部署が中心となって企画したのですが、例えば体育の先生が自宅でできる筋トレを教える動画であったり、手洗いのやり方を面白く伝える動画であったり、私がワニ博士という大阪大学マスコットキャラクターの被り物をしてキャリアセンターの説明をする動画、名物先生の模擬授業動画、アカデミックライティングやアカデミックスキルズのトレーニング動画など様々な動画を掲載しています。

Question②
企業がインターンシップ開催の重心を、
1day・夏開催に置いている理由は何か?

村山 村山
まず学生がインターンシップに参加し始めるきっかけは、就活の先行きを不安に思って参加し始めるという動機が一番多いと思います。そういった学生が多く押しかけてくるため、企業としても数をこなす、人数を捌くことを考えるとどうしても1dayの比率が高まります。学生からすると、複数日程用意されている就業体験を好む傾向が強いので、そういったものは実施しつつ、1dayを交えて組み合わせでやっていく、ということが大事だと考えています。それからインターンの重心が夏になるという点についてですが、3年生に入るとすぐに活動を始める学生が増えています。それに合わせて企業も夏に重心を置かざるを得なくなったということだと思います。ただ22卒については大手企業を中心に秋以降もコンスタントにインターンを行なっていくという意向が強いように聞いています。私が大事だと思っていることは、複数日程のインターンシップでも、1dayでも、学生に対してできるだけ現場の方が生の声を届けること、あるいは経営層が経営方針を自分の言葉で伝えることが大事だと思います。例えばある上場企業で、社長が学生に対して、自らの言葉で経営方針を語るようにしたそうです。その会社ではその後のエントリー率が高まったというお話も伺いました。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。22卒の学生の中には3年生に入ったらすぐにインターンシップを始めたい、なかには3年生より前にインターンシップに参加されるような学生も少しずつ出始めていると思うんですが、彼らはどのようにしてインターンシップを選んでいるのか、もしくはどういう動機で早くインターンシップに参加されたいと思っているんでしょうか。
家島 家島
色んな学生がいて、不安からやっている学生もいるし、自分から意欲的に臨んでいる学生もいます。学生が求める、評価するインターンシップは何かというと「情報が得られる」「人脈が得られる」「採用に繋がる」「スキルアップ・成長ができる」の4つだと思います。メリットがあるか、コストパフォーマンスが良いか、を学生はすごく気にしているようです。一方で大学からすると、インターンシップというのは教育として5日間以上と文科省からも言われていますので、しっかりと学生が成長する、スキルアップできる、そして説明会では得られない情報が得られるインターンシップにして頂きたいと思います。

Question③
学生が求める・評価されるインターンシップとは?
大学から企業へ期待することは?

家島 家島
先程申し上げた通り、学生が求めている、あるいは評価しているインターンシップというのはメリットがあるもの、コストパフォーマンスが良いものです。メリットにはいろいろなものがあると思いますが、例えばそこでしか得られない情報を得られる、次の選考に繋がる特権がもらえる、真のスキルアップ・成長ができる、それから他大学の学生との交流ができる、こういった人脈や経験というのは学生にとって魅力的なようです。一部有償のものに関しては小遣い稼ぎということで参加しているという話も聞きますが、多くの場合はお金というより人脈・経験、スキルアップ、何より選考に繋がるということを期待している学生が多いようです。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。異大学交流ということで、自分のキャンパスもしくはゼミに所属するだけでは得られない経験、出会いを期待しているというお話でしたが、調査のところでは省かせて頂きましたが、学生から指示されているインターンシップの形式の1位はグループワークになっております。その理由はそこかもしれません。

ディスカッション①
「オンライン選考」を実施するにあたり、
学生の不安/要望は何か?企業がすべきことは何か?

家島 家島
学生側の「自分の力をちゃんと評価してもらえないのではないか」という不安は多いと思います。なので大学の方でも、カメラを見て話すとか、光を前から当てて自分の顔が暗くならないようにするとか、教えたり支援したりしていますが、この努力・工夫をしている子としていない子の差が激しいです。そうすると、企業が何をすべきかに関わってくるのですが、面接の際に「オンラインでは良いのに対面では良くない」とか、その逆も含めてどうやって見抜くかというところを、ノウハウの蓄積を重ねて、確立をしていくことが求められると思います。学生にとっても自己分析と一緒で、オンラインで魅力が5割増しになるタイプなのか、半減してしまうタイプなのかというのを理解することで、オンラインでは無く対面での面接を志望することや、対面よりもオンラインの方が良く見えるのでオンラインでアピールする、といった戦略も練ることができると思うので、オンラインと対面の違いを分析的に見ていくということが学生側にも企業側にも求められるのではないかと思います。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。今お話しございましたそういった点を踏まえまして、企業側がどのように選考プロセスを引いていくべきか、どのようなケアが必要かという点を村山さん、お願い致します。
村山 村山
学生の不安と企業側が持っている不安はある意味共通しています。オンラインですと、学生から見たら、企業の雰囲気がわかりにくい。逆に企業側から見ても、その学生の志向性・人間性がよくわからない。これに尽きると思います。ただ結局お互いにそこは慣れて、来年は習熟度が増すと思います。それ以外に具体的にやるべきことは、企業側は学生に対してオンラインを通じてでも良いのでできるだけ現場を見せてあげることだと思います。既にやっている会社はありますが、現場の人が現場で動きながらリアルタイムで動画で説明し、リアルタイムで質問も受け付けるようなことです。あるいは、経営層が自分の口で自分の考えを説明してあげる。さらに状況が許せば、少人数でも良いので対面で学生に会って言葉をかけていくことも大事だと思います。ただ、働きやすい環境とか和やかな社内雰囲気というものを全面に押し出していた会社もあると思いますが、これはオンラインだと伝えにくいと思います。ですので企業の強み・特徴を今一度わかりやすい言葉で打ち出す必要があると思います。例えば、株式市場では現在コロナの影響で「ヘルスケア」「在宅」「省力化」などに合致する銘柄が買われています。そしてそれに外れている銘柄は少し冴えない状況です。なですので自社の強みは何なのかというのを今一度はっきりさせるために、例えば証券アナリストや機関投資家が自社もしくは自社の業界に対してどういうことを言ってるのか、というところに耳を傾けてみることも大事だと思います。

ディスカッション②
「学生の企業選択基準」について、入社予定先を決める理由で「一緒に働きたいと思う人がいるか」を重視する背景は何か?企業がすべきことは何か?

家島 家島
インターンシップは学生にとって、お試し・記念などもあるという話なので、インターンシップを選ぶ時と入社予定先を決める時の理由が違うことは当然だと思います。僕は就活を恋愛に例えることが多いのですが、付き合う時の基準と結婚する時の基準が違うのと同じだと思います。長期的な関係を視野に入れているかというのが、入社予定先を選ぶ時には出てくるということです。最近転職することを念頭に置いた上で入社する学生が増えているという話もありますが、ここに出てくる多くの学生は、あまり転職は考えておらず、そこで働き続けることを考えている学生が多いのかなと思いました。そして企業側がどうすべきかは、先程申し上げた通り、そこで働き続けたいと思う学生もいれば、すぐに成長して出ていきたいという学生もいると思うので、新入社員を一律に考えないことが大事です。学習者の適性に対して、与える環境・教材・研修などの組み合わせがあって、万人受けするものありません。A君にはビデオ教材が効くけれども、B君にはテキスト教材の方が効く、ということはあるので、複数のキャリアパスを用意して多くの学生を拾えるような準備をするとより多く採用・定着に繋がるのではないかと思います。多種多様な先輩の事例を示し、それをコース化していく、ということが大切だと思います。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。先輩を指し示すということと、一人一人に合わせたキャリアデザインを示すというところがポイントだったかという風に思いますが、企業はますます色々な工夫が求められると思います。村山さん、いかがでしょうか。
村山 村山
そうですね。理系の学生の場合は自分の専攻で進路を選ぶ傾向が強いですが、文系の学生は自分の専攻があまり進路と関係無いです。なので企業側がどうやって上手くプレゼンするかというのが大きく人気を左右します。企業側からしてもオンラインで想いを伝えきることは難しいと思います。例えばオンライン説明会やオンラインインターンシップをまだ行なっていない会社に理由を聞くと、オンライン専用のテキストやコンテンツが手元に無いからと答える会社が案外います。それは今作って頂くしか無いし、作れないのであれば色んな外部に協力を仰いででも作る必要があると思います。また、業種でいうとIT系の人気が高いというのは当然だと思っています。DXやAIというキーワードが学生に好評です。そういった業種に合致していれば良いのですが、それ以外の業種もDXやAIは無縁ではありません。いわば全ての業種に必要な技術ですので、こういったキーワードを自社の説明に織り込んでいく必要性も感じています。

ディスカッション③
21採用総括として、採用/就職活動、成功のポイントは何か?

家島 家島
オンライン化に対応できた企業が成功したのではないかと思います。ただオンライン化に対応できたと言っても2種類あると思っていて、それは、ただ対面でやっていたものをオンライン化して乗り切った企業と、オンラインならではのものとしてカスタマイズした企業です。そこまで考えて先手を打てた企業は他と差があったと思います。勝ち組か負け組かではなくて、なんとか間に合わせられた企業、先手を打って勝てた企業、間に合わせられなかった企業という3つに分けられると思います。オンライン化した時に対面には無かったものは何なのか、そしてそれをどうプラスに使いこなすことができたか、そこがポイントだと思います。学生側にも採用担当者側にも両方に言えることだと思います。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。今のお話を受けまして村山さんいかがでしょう?
村山 村山
21採用を見ると早めに手を打っていた企業が比較的順調に終わっているように伺っています。学生側も今回のコロナの問題が深刻化する前に対面である程度企業と接触を持てていた学生は比較的順調に就活を終えたようです。また21卒の特徴として、複数の内定を抱えたまま判断を先送りにする学生が増えたのではないかというお声を企業の方や大学の先生からもお聞きします。親御さんが企業のコロナの影響を心配し口出しをするということもあると聞いていますので、企業としてはその不安を払しょくしてあげることが大事かと思います。また、経営者がご自身の言葉を社内外に発信するということは大事だと思っていまして、ある大手メーカーの社長の話ですが、その方は自分が社長になってみると会社の社員があまり元気が無いと気付いたそうです。そして社員らを励ますつもりでメディアのインタビューにも割と時間を割いて受けたとのことです。結果その会社では経営手腕への評価・期待が高まり、株式市場でも株価が上がって時価総額が増し、さらに社員も自信を取り戻したそうです。就活のマーケットでも評価が高まったと聞いていますので、採用戦略というのは大きな経営戦略の一部だということをもう一度問い直す必要があると感じています。

Question④
22卒学生の今の心境・活動状況は?

家島 家島
やはり学生は世間や世界状況に対して不安が高いです。それにより普段通りのパフォーマンスが発揮できないところが一番困っており、不安に思っていると良く聞きます。なので我々大人、大学や採用担当者の方が余裕を見せて、彼らの普段通りのパフォーマンスを発揮できるようにメンタル面を導く、それから環境・インフラ面も整えることが大事だと思います。

ディスカッション④
22採用において、学生に求められる力はなにか?
企業が注力すべきこと、ポイントは何か?

家島 家島
これはオンラインに限らず今までも学生に言ってきたことですが、まず自分の頭で「考えて」決断すること。それから独りよがりになるのではなくしっかり情報を「調べる」ということ。そして最後は自分の責任で「行動」すること、そして「くじけない」こと。コロナが不安な状況においては、このメンタルの強さが求められると思います。それを踏まえて企業が注力すべきことは、学生の良さというのはオンライン・対面でそれぞれ伝わりやすいものと伝わりにくいものがありますので、学生の何を見たいのかという目的を考えた上でオンラインか対面かを選択をしてほしいと思います。
成瀬 成瀬
ありがとうございます。今のお話を受けまして、村山さんいかがでしょうか?
村山 村山
21卒の学生の状況を聞いて、22卒の学生は危機感を強めています。特に上位校の学生は、早速就活始めてますという声が多いです。ですので企業側もその動きには対応していかなくてはなりません。自社の強みは何なのか、自社が求める人材像が何なのかをしっかり学生に伝えてあげることが必要です。また今コロナを機に「ニューノーマル」という言葉がよく使われるようになっています。ニューノーマルの時代で世の中ルールが大きく変わり、進化ではなくイノベーションといえるくらい世の中の仕組みが変わる可能性があるわけです。例えばアメリカで「ビジネス・ラウンドテーブル」という団体が株主第一主義からの脱却を宣言しました。またフランスで、「使命を果たす会社」という法制度ができて、食品のダノンがいち早く対応しています。このように世界の企業の動きというのはものすごく早いです。ですので、自社もその流れの中でどういうポジショニングにあるのかというのをしっかり説明して頂く必要があると思いますし、そうすることでグローバル企業に伍して採用活動をやっていけるのではないかと思います。少し大きなテーマになりましたが、最近特に強く思っていることですので、最後に付け加えたいと思います。
家島 家島
もう一点、先程の話にもありましたが、大学キャリアセンター関係者も今日100名視聴し、500名ほど採用担当者も視聴しているということなので、やはりそこのコラボレーション・話し合いが絶対必要だと思っています。日本にはありませんがアメリカにはNACE(National Association of Colleges and Employers)というのがありますし、INEUCS(International Network of Employers and University Careers Services)という世界レベルのネットワークも立ち上がりました。そういったものの日本版がそろそろできても良いかなと思いますし、それは金儲けのためではなく、本当に学生のためにというところで、学生を産学共創で共に育てるというところで、コラボレーションができたら良いと思っています。