採用活動
オンライン

ターゲット人材を惹きつける中途採用戦略 ~母集団形成方法、応募者へのアプローチ方法に迫る~

出演者

堀江 敏夫 様

インフォコム株式会社 人事室 人財開発チーム 課長

堀江 敏夫 様

田邉 浩介 様

KISCO株式会社 経営統括Division人事部 人事戦略チーム 主任

田邉 浩介 様

鈴木 圭

株式会社ワークス・ジャパン
ファシリテーター

鈴木 圭

大坂 美優

株式会社ワークス・ジャパン
司会

大坂 美優

中途採用は母集団形成より明確な人材要件設定を重視

鈴木 鈴木
本日は、母集団形成の方法や人材要件の策定、応募者の見極めの仕方など、中途採用戦略についてさまざまな角度からお聞きしたいと思います。中途採用強化の理由としては、即戦力人材やデジタル人材を採用したい、あるいはガバナンスコードの改訂といった背景があると思いますが、まず、最初にどのような目的、背景で採用強化されているのかをお伺いできればと思います。
堀江 堀江
インフォコムは、年間20名ほどを新卒採用しています。定数採用ですから会社の年齢構成等は安定化していくはずですが、一定の退職者は避けられません。そのための補充や、この事業領域を伸ばしたいなどの現場ニーズに応えるために即戦力を中途採用しています。
田邊 田邊
KISCOでは経営戦略に基づいた人材を中途採用しています。とりわけ近年はグループ会社の増加に伴って、管理部門採用もかなり増えている状況です。
鈴木 鈴木
母集団形成の方法や人材要件の設定についてはいかがでしょう?
堀江 堀江
中途採用では母集団形成という考え方はあまりしていません。新卒の場合は何千人という母集団がいて、その中に優秀な人が居るという理屈で進めていますが、中途の場合は、スポットで技術や経験がある人を採用したいと考えているので、そこまで母集団を意識はしません。その上で、人材要件をどう決めるかですが、これは事業軸と技術軸に大別できます。技術軸では、例えばコンピュータ言語の経験があるかどうか。業界軸では、業界に対してある程度の知見や土地勘があるかどうかなどを見ています。
鈴木 鈴木
エージェントに要件を伝えて、ターゲティングして、紹介してもらう?
堀江 堀江
そうです。加えて、いわゆるダイレクトリクルーティング、あるいはリファラル採用という言い方が正しいかどうかわかりませんが、ローカルな形で人づての採用も組み合わせています。
鈴木 鈴木
人材要件は、どのようなプロセスで決めておられるのでしょう?
堀江 堀江
採用を希望する現場部署のマネージャーと話をします。こんな技術の経験があるとか、こうした業界で何年間の経験があるかなど、だいたい経験年数とレベルで要件を決めることが多いですね。ただし、現場に「どんな人がいいですか?」と聞くと、ものすごい要件が出てきて、「そんな人どこに居るんだよ」という話になりがちなので、現実的には「ちょっとこの辺まで緩めてもいけますかね」みたいなコミュニケーションしながら人材要件を設定しています。
鈴木 鈴木
現場とのコミュニケーションで要件をすり合わせながら決めていかれるという形ですね。
堀江 堀江
そうです。新卒の場合はポテンシャルを見ている部分が大きく、部署の異動なども含めた活用の仕方がありますが、中途採用は即戦力をピンポイントで補充していくため、ミスマッチングのリスクが新卒よりも大きいですよね。だからこそ人材要件のすり合わせは、かなり意識して行う必要があります。
鈴木 鈴木
田邊様にも、応募者へのアプローチ方法と人材要件の策定についてのお取り組みをお伺いできればと思います。
田邊 田邊
中途採用は私1人で担当していることもあり、極力数を絞った母集団形成を目指しています。そのために、エージェントに求める人物像をしっかり伝えて、ピンポイントで紹介いただくという方法をとっています。人材要件の策定についてはインフォコムさんとほぼ同じです。現場からはピンク色の象を探すような要望もよく言われますので、まずは市場感も擦り合わせて、しっかりとペルソナを握ることに注力しています。我々の場合、ペルソナは結構リアルにキャラクターライズしており、年齢や居住地をはじめ、こんな理由で転職を考えていて、うちでこういうマッチングをさせると、そんなところまで策定しています。
鈴木 鈴木
そうした具体像をエージェントに正確に伝えるために工夫されているポイントはありますか?
田邊 田邊
定期的にエージェント向け説明会を開催して、事業内容を説明するほか、求職者と直接会話されるCAさんと、過去のマッチング人材の事例などを参考に、求める人物像のすり合わせを行っています。

応募者の見極めには面談の併用が有効

鈴木 鈴木
応募者の見極めについてはいかがでしょう。実際の採用プロセスでの見極め方や、そこで感じる課題についてご紹介ください。
堀江 堀江
応募者は面接のためのキャラクターを作ることもありますから、面接以外にも現場の社員に会ってもらっています。1.5次面接とか2.5次面接と呼んでいますが、ちょっとカジュアルな場で、本人の考えるキャリア観と会社の仕事がマッチするかを、現場レベルできちっと合わせるようにしています。当社はソフトウェアのエンジニアの採用が多いので、技術者についてはこの会社でこんな仕事していたと聞けば、どういうレベルの仕事していたのかはわかりますが、ビジネス系の人材、営業や事業創出などは定量的に捉えることはなかなか難しいです。仕方ない部分があると思いますが、転職時って当然ながら自分を良く見せようとする意識が働きます。本当はプロジェクトに関わっただけなのに、リーダーを務めていましたと話す人もいます。ですから「リーダーとしてどんなことをしましたか」と、詳しくお聞きする。実績が本当であれば、かなり具体的なこところまで語れるはずですから。あとは本当に稀なケースですけど、本人の合意の上でいわゆるリファレンスチェックを行うこともあります。
鈴木 鈴木
なるほど。いろんな角度からその方の志向性やスキル、経験を見られているのですね。もう一つ、面接官によって、考え方や見るポイントも違うと思いますが、その辺りを均等にするための取り組みなどはありますか?
堀江 堀江
面接官の評価のばらつきをなくすために、新卒採用では質問項目を決めています。しかし、中途の場合はちょっとそこまでは行いません。中途採用では、現在その部署で活躍している人にイメージが近いといったところがポイントになったりします。イメージが近いとコミュニケーションもスムーズでしょうし、入ってからも活躍が期待できるケースが多いと思います。
田邊 田邊
当社では、書類選考から厳しくチェックするようにしています。書類選考の段階で懸念点を洗い出し、現場の面接官と共有した上で面接をする。面接はその答え合わせですね。ただ最近はWeb面接が増えて、候補者の持つ雰囲気のようなものの見極めはかなり難しくなったと感じています。その辺りは、堀江さんと同じように、我々も面接以外で一度ご来社いただく体制をとって、可能な限り解消していく形をとっています。
鈴木 鈴木
書類選考時点での懸念点とはどのようなものでしょう?
田邊 田邊
この人はこういった場合に離職に繋がりそうだとか、入社後にこういうミスマッチが起きそうだとか、そういう懸念ですね。
鈴木 鈴木
面接官の評価のばらつきをなくす取り組みは、KISCO様でも実施されていますか?
田邊 田邊
面接官にも役割分担があって、現場ではどちらかといえばスペック、スキルのマッチングを、人事の方ではタイプマッチングを見ています。その中で、この人はこういうところでつまずくんじゃないか、こういうところで退職するのではないかという懸念だけは、すり合わせを行います。
鈴木 鈴木
やはりオンラインでの見極めは難しいと感じますか?
田邊 田邊
面接にアテンドする際の、ちょっとした会話に人柄が見える部分があると思うのですが、どうしてもWebだと、すぐ本題に入ってしまうので、人柄を見極めるというところは非常に難しいと感じます。
堀江 堀江
田邊さんがおっしゃるように、面接前後のビヘイビアが全然違うってありますからね。この前も当社の選考の中にいる方に、1.5次面接みたいな感じで会社に来てもらったんですが、お茶出しにも適切な感謝をされていて、とても感じがいい。そうした部分がやはりオンラインだけでは見えにくいと思います。
鈴木 鈴木
すると2社様ともオンラインだけで内定まで出すっていうケースはあまり多くないですか。一度は対面で会う機会を設ける形でしょうか。
堀江 堀江
基本当社はオンラインのみで最後まで内定を出すケースの方が多いです。だから、現場が会いたいという希望があれば、機会を設ける感じです。
田邊 田邊
当社の選考フローとして、最終までウェブで進めていますが、応募者の方に来社されたいか確認して、希望者には面談という形で来ていただくスタンスをとっています。
鈴木 鈴木
ありがとうございます。ちなみにオンラインでの見極めの難しさを打開していくために、必要なこと、試されていることがあればご紹介ください。
田邊 田邊
先ほどのお話と繋がるのですが、通常、面接って30分40分ぐらいだと思いますが、我々は1時間ぐらい取るようにしています。そこで面接の本題に入る前に、我々がマッチングを重要視していること、そして一方通行ではなく、応募者の人にも当社が希望をかなえられる職場かどうかを見極めてくださいということをお伝えしています。
鈴木 鈴木
最初にマッチングの機会であることを伝えるのは、大きなポイントかもしれませんね。堀江様はいかがでしょう。
堀江 堀江
例えばデザイナーなどは、自分のポートフォリオを持参されるでしょう。そうした自分の作品や実績をアウトプットしたものがあれば、オンラインで選考の精度を高められると思っています。ただ、転職活動する人の立場に立てば、正直面倒くさいですから、そこまでは強制しにくいですね。
鈴木 鈴木
でもそれは求職者の方にとってアピールにもなりますよね。ありがとうございます。では続いて、求職者の企業理解や志望度の醸成についてお聞きします。近年、オンラインの増加とも関係しているかもしれませんが、求職者の企業理解や志望度の醸成が不足しているのではないかと言われていまが、実際のところはどうでしょう?
田邊 田邊
企業理解という点では、極力面談という形をとり、求職者の年齢に近い社員やバックグラウンドが近い社員を同席させて、できるだけ生の声を届けるようにしています。そこにはなるべく人事も入らないようにして、本当の現場の声を聞いていただく。もちろん、事前にこういうことを話しては駄目とか、基本事項の共有はしますけれども、基本的には面接者に任せています。
鈴木 鈴木
ちなみにそうした面談は、選考プロセスで何回ぐらい設けられているんですか?
田邊 田邊
1回か2回です。最終面接の前に1回、そして最終面接終わって内定が出た後ですね。極力対面で行いたいと考えていますが、ここは応募者の希望に沿う形ですね。
鈴木 鈴木
ありがとうございます。堀江様はいかがでしょうか。
堀江 堀江
求職者の方々が目にしているリソースは、決して豊富ではありません。求人票や採用系のホームページの情報はいいことばかり書かれていますが、実際働くとなればもう少しリアルな部分があるでしょう。だから例えば株主向けのIR通信だとか、それこそ決算情報であるとか、会社がオフィシャルに出している情報をきっちり見て、納得した上で志望していただきたいと伝えています。我々は、インフォコムグループのアムタスという「めちゃコミック」を作っている会社の採用も行っていますが、「めちゃコミック」はスマホの漫画サイトですから、楽しそうとか、華やかとか、明るいといったイメージを持たれがちです。しかし、そのビジネスが成立する背景にはしっかりしたガバナンスがあるわけです。その辺りのイメージギャップがないかどうかは、本人によく確認するようにしています。

世代によって異なる転職者が求めるもの

鈴木 鈴木
最近は社員の雰囲気や職場環境、あるいは働く場所を重視するなど、求職者の方が求めているもが変わりつつあるように思うのですが、そうした変化について肌感覚で感じられていることはありますか?
堀江 堀江
本当に肌感覚になりますけど、リモートワーク前提を希望される方、副業の許可を希望される方が増えてきたように思います。当社は副業可です。
田邊 田邊
リモート前提は本当に増えた印象がありますね。副業についても聞かれることがたまにあります。我々の会社は基本的には副業を認めていません。
鈴木 鈴木
福利厚生など制度面についてはいかがでしょう?
堀江 堀江
年齢にもよると思います。例えば30代前半までの人は、まず額面年収を見るケースがほとんどです。しっかりしている人は退職金の拠出であるとか、法定外福利費なども見ている感じかな。
田邊 田邊
確かに年齢によって差がありますね。若い世代に福利厚生を重視する方が多いと感じます。ちょっと堀江さんにお伺いしたいのですが、最近の応募者の傾向や、こんな人が多いと感じるところはありますか?
堀江 堀江
コロナ対応って、会社さんによってかなり違うでしょう。だから現在所属している会社のオンライン化なり、オンライン対応に不満や意見を持っている人が増えているように思います。その辺りについても丁寧に対応する必要があるのと思っています。
鈴木 鈴木
ちょっと気になる先ほどのリファラル採用についてお伺いしたいのですが、2社様はリファラル採用をどのように運用されているのでしょうか
堀江 堀江
例えばAという会社からインフォコムに転職した人が、A社時代の同僚に「インフォコムは良いよ」と話したことで、複数の方がインフォコムに転職してくれたというケースがあります。そうした方々は当然ながら活躍の期待値も高いですし、転職者仲間の人間的な関係もあって定着率も高い。すごく精度の高い採用手法だと思います。
鈴木 鈴木
実際に制度として整えられているわけではないのですね。
堀江 堀江
はい。以前に他社の調査をしてみたのですが、数千円のギフトカードをインセンティブとしているケースなどもありました。しかし、インセンティブになるのはちょっと違うかなと思っていて、今のところは制度化せず、ローカルにやっています。
田邊 田邊
当社の場合、制度としてはあるんですけれども、補助金やインセンティブはありません。社員の皆さんに協力いただいている状況です。具体的な取り組みとしては、入社3年目ぐらいの社員に対して、年に1回、この制度についての説明会を行っています。リファラルはどちらかというと若手に絞っていった方がいいと考えていて、なかでも帰属意識が高そうな社員にアプローチをかけています。
鈴木 鈴木
本日は2社様にお取組みの数々をお伺いしました。このあたりでトークセッションを終了させていただきます。ありがとうございました。