採用活動
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全国転勤・ジョブローテーションに不安を抱えている学生との向き合い方

出演者

山城 真 様

東京海上日動火災保険株式会社 人事企画部 人材開発室 採用チームリーダー 

山城 真 様

彦田 友弘 様

株式会社LIXIL Talent&careers Talent acquisition主査

彦田 友弘 様

岡野 玄

株式会社ワークス・ジャパン 人材ソリューション事業部 プロモーション部 PR1課 ファシリテーター兼司会

岡野 玄

ゲスト2社ともに「全国転勤」を不安視する学生との向き合い方が課題

岡野 岡野
今回のテーマを課題に感じている企業さんは非常に多いです。ゲストの2社様と一緒に解決策を模索していければと思います。それでは初めに、各社様の22卒の状況を簡単に振り返ります。
岡野 岡野
まずは東京海上日動火災保険様から。課題の1番目は、本日のテーマである「全国転勤・ジョブローテーションに不安を抱える学生との向き合い方」です。総合職グローバルコースの150名が全国転勤になるわけですね?
山城 山城
全国、全世界への転勤になります。
岡野 岡野
全世界ですか。地方学生はエリアでもグローバルでも順応してくれる魅力的なイメージがありますが、エリアコースで男性を増やしたのはどんな意図があったのでしょう?
山城 山城
実は今日のテーマにも直結する取り組みの一つです。今までグローバルコースは男性が中心で、エリアコースは女性が中心でした。男性陣が日本中・世界中を転勤し、その各地でのビジネスを牽引してきました。現地でグローバルコースの男性がやっていた仕事を、現地に根付いた人がやることで、その人にとっても転勤がない、要は今までのグローバルコースも、将来的に転勤がなくせるのではないかということで、3~4年程前から男性採用強化に取り組んでいます。
岡野 岡野
続きまして、LIXIL様の22卒採用を振り返ってみたいと思います。やはり一番の課題は東京海上様と同じく、今回のテーマである「全国転勤・ジョブローテ」関連ですね。

内定辞退率上昇の訳と対策

岡野 岡野
続いて、資料調査報告を見ながらテーマに迫っていきたいと思います。
山城 山城
辞退率が昨年より高まったというのは我々も同じ感想ですが、入社理由「自分のやりたいことができるか」は今日のテーマ、ジョブローテーションにも関わってきます。場所のみならず、要は職務、職種、部門など、その希望度合いが年々高まっており、就活生の中で「配属ガチャ」という言葉も生まれるほど難しい問題です。学生から「自分の希望はどれだけ通りますか?」と聞かれた時に明確な答えは出しづらい、非常に難しいところであると改めて感じています。
彦田 彦田
私共も同じように、辞退率は少し高まった印象を持っています。特に承諾後の辞退が多くなった印象です。要因は、社風が伝わらなかったのかもしれないですし、やりたい仕事を提示できなかったのかもしれないですね。LIXILは大きな括りでの募集をかけています。明確に「この仕事に就ける保証はあるんですか?保証はないんですよね」と聞かれた時に現実を伝えると、やはり辞退しますという声がままあったので、ここをどう乗り越えていくかが今後の大きなポイントだと思っています。
岡野 岡野
定年は先に伸び、人生100年時代と言われる昨今、いろいろな事業を経験して、ジョブローテーションがあるほうに魅力を感じる学生も一定数いるかと思いますが、企業側もジョブ型について必ず触れるので意識する学生さんが多いということなんでしょうかね。アンケートによると、学生が企業を決める際、「何の」仕事を「誰と」、そして今回のテーマである「どこで」やるかを重視していることが読み取れます。

ゲスト2社の転勤・ジョブローテーションの現状

岡野 岡野
ここからは、テーマに沿って現在の2社様の全国転勤やジョブローテーションの現状について、伺いたいと思います。
山城 山城
弊社はさきほどスライドでご紹介したとおり転勤のある職種はグローバルコースというもので、国内では沖縄から北海道まで、世界ではアフリカまで配属の可能性があります。おおよその転勤のスパンは、ミニマム3年から長くても5〜6年ぐらいで一つの部門を経験し、入社後10年で3場所が目安です。そこから適性を見出し、専門性を高めていく育て方が基本です。異動は、ずっと東京というパターンもゼロではないですし、東京から札幌、札幌から大阪というパターンもあります。いろいろなケースがあり、私自身も京都に3年、東京に5年、ベトナムに5年で、今、人事に4年目なので、東京海上の王道のローテーションを走っているようなかたちです。
岡野 岡野
ジョブローテーションや全国転勤は会社側からの学生さんに対するお願い、ないしは命令とは逆の、自分でキャリアを選べる制度にも力を入れておられるそうですね。御社の「ジョブリクエスト制度」について伺えますか。10年で2~3か所を経験した方がチャンスを得られるのか。または、何か面接の上で制度を受けられるかどうか決めるのでしょうか?
山城 山城
ジョブリクエスト制度はおそらくいろいろな会社さんですでに導入されているかと思いますが、部門の仕事、職務を公開したうえで全国から公募する制度になります。現職場、一つの場所に2年以上在籍している人であれば誰でも応募できます。要は3年目以上の社員であれば、誰でも活用できる制度です。たとえば2場所目で海外駐在に手を挙げることも可能ですし、私ぐらいの年齢の人間がそれに応募することももちろん可能です。実際に私自身も、ベトナムに駐在する際はこのジョブリクエスト制度を使って海外駐在に応募し、レポート提出や面接を経て着任しました。制度は15年ほど前から運用されています。しかし、ジョブリクエスト制度で公募される職種のポストは100程度なので、全社員の数1万人超と比べると圧倒的に少ないのが実情です。つまり、大多数の社員はジョブローテーションで働くことになりますね。10年3場所は、たとえば営業なりコーポレートなり、毛色の違う3場所というのが最初の10年で、その後の10年は、同じ営業は営業でも東京と名古屋など、同じ部門の中でローテーションしていくイメージです。
岡野 岡野
彦田さんにもお伺いします。技術職と事務職の、もし異動のスパンで違いなどがあればお願いします。
彦田 彦田
当社の技術系職種であれば、5〜6年で専門知識を習得し次の場所に異動となることが多いです。これも転居を伴う転勤かというと、技術系の職種は拠点エリアが集中しているので、例えば東海エリア内での異動、などとなってきます。その一方で事務系の職種は、たとえば営業職ですと10年同じ拠点・同じお客様というケースや、15年同じエリアで働く方もいます。その中で個人のキャリアプランについて尊重されるイメージです。

学生の「全国転勤」に対する不安を減らすための努力

岡野 岡野
実際に、各社様が22卒で実施した具体的な学生との向き合い方やコミュニケーションについてお伺いできますか。
山城 山城
やはり転勤は、東京海上でも学生さんの辞退や不安につながる大きな要素のひとつです。実際に私も、グローバル女子学生の方に転勤が理由で辞退をされたばかりなので、厳しさを実感しています。学生さんと話をしていても感じますし、僕自身も転勤が大好きという訳ではありません。やっぱりワークライフバランスの部分と、職務上の成長の2つの要素が絡まっているかと思います。学生さんにとっては、ポジティブにもネガティブにも要素がありますが、主にワークライフバランス面でネガティブに意識が集中してしまう。その分、ポジティブな面である職務上の成長や経験を仕事内容に絡めて説明するようにしています。
さきほどから全国・全世界へ転勤があると申し上げていますが、なぜかというと、我々の扱う商材は「リスク」だからです。天候災害や飢餓など、さまざまなことが全国、世界中で起きているわけで、東京だけで当社のすべての商材、リスクを理解できるわけがないのです。我々のお客様は、大企業さんから中堅企業、一人親方まで多くいます。転勤を経験する中でさまざまなお客様と直接やり取りをしましたが、そこから学べることは計り知れないくらい多いのです。やはり日本経済を支える損害保険とすると、そのトップレベルのかっこいい仕事だけが東京海上の仕事ではなく、さまざまなお客様がいることを肌で感じるためには、転勤の経験がマストなんだとお伝えして、できるだけポジティブに受け止めてもらえるような努力はしています。しかし、きちんと伝えきれないのか、辞退されてしまう学生さんがやはり多数いらっしゃいます。我々の理屈だけを伝えても独りよがりな話になってしまうので、いろいろな対策を打っていかなければと思います。
岡野 岡野
グローバルコースの門を叩く方はある程度は転勤も意識していると思いますが、エリアコースと迷っている学生さんにもグローバルコースの魅力はお話されるんですか?
山城 山城
エリアコースと迷う学生さんでも、全国・全世界の転勤の耐性があると感じた学生さんに対してはグローバルコースのよさを伝えることも多いです。ただ、エリアコースももちろん我々と同じ総合職で、基本的に仕事の中身や職種、役割は変わらないので、我々の中でグローバルが上でエリアが下というような区分はありません。そこはライフスタイルや自分自身がどのようにキャリアを歩んでいきたいかという部分を重視して話すようにしています。
グローバルコースは、基本的にキャリアアップしていくことが前提です。当然ながら男女ともにライフイベントによる変化は起きますが、どんなことがあってもトップギアで仕事を経験していくのがグローバルコース。エリアコースはライフイベントに合わせてお休みも含めながら、自分のペースで少しずつ上っていきます。どちらを選ぶかは人それぞれの考え方や価値観、あるいは配偶者の職業によっても変わってきます。学生さんがどちらを重視するかに応じて話をするようにしています。
岡野 岡野
今のマネージャー陣はグローバルコースの方が多いでしょうね、事実としては。
山城 山城
そうですね、圧倒的に多いです。だからグローバルコースは男性がほとんど。ここを問題視しています。エリアコースの女性がマネージャー陣、経営陣に少ないということ自体がおかしな話なので、会社全体をあげて女性の活躍、あるいはエリアコースの活躍を推進しているところです。
岡野 岡野
では彦田様にも伺っていきたいと思います。理系学生、やりたいことを突き詰めていくイメージがあります。転勤の可能性を説明をするときの、コミュニケーションの取り方やタイミングなどご教授ください。
彦田 彦田
理系学生には社員のリアルな声を伝えることが大事だと思うので、技術系コースに応募されている学生さんには、筆記試験に合格したら必ずリクルーターを1名つけてフォローを行っていました。しかし、特に22卒は完全オンライン選考になるので、常に同じ先輩だけでは幅広い話題が伝わりにくく、1人のリアルしか伝わらないということもあり、選考段階に応じてコミニュケーション方法を改善しました。
まず、筆記試験に合格して一次面接の前にはグループでの面談をお願いしました。社員2~3名に対して学生が5~6名、グループでの面談です。学生を複数人入れたこともメリットがあったように思います。完全オンラインだったので、どんな人が一緒に選考を受けているのか分からない状況でしたが、横のつながりも大事なので、あえてグループ面談にすることでどんな人が同期になり得るのかを感じてもらえます。また、複数の先輩がいることでフィールドの幅広さを感じてもらう狙いもありました。オンラインなのでいろいろなエリア・職種の先輩社員を登場させることができましたね。その後は個別面談を行い、さらに合格したら「おめでとう」の意味を込めて内定者だけの懇談も。
社員には選考フェーズに合わせてコミュニケーションを取るようお願いしていましたが、思うように伝わらない部分もあり、多少は辞退者も出ました。しかし、多くの社員の協力を得たことで以前に比べてよりリアルな声を伝えることができたと感じています。
岡野 岡野
リクルーターというと出身大学の先輩というイメージありますが、そうではないのですね?
彦田 彦田
はい。何をやりたいかはっきりしている学生が非常に多かったので、出身大学というよりも持っている知識を生かせるのかどうかという観点でリクルーターを選抜しました。たとえば同じような機械の専攻でも、電機電子や情報、さらにその中でも細かくいろいろ分かれていますよね。ですので、10人程のチームの中で同じようなことを学んできた社員をアサインできるようにチーム作りをして、フォローをお願いしました。
岡野 岡野
御社は全国に工場をお持ちですが、そのあたりはいかがですか?「今日は北海道、熊本、長崎の、こういう仕事の人を呼んだよ」という感じで、毎回いろいろな配置で全国から呼ばれたのですか?
彦田 彦田
そうですね、毎回いろいろな拠点の方に参加してもらうようにしたことと、ダイバーシティの観点から留学生や女性にもお願いしました。とはいえ、やはり男性社員の方が多いものですから、思うようにいかない現状もあります。

転勤にまつわる課題払拭に向けて、今後の取り組みと目指す採用のあり方

岡野 岡野
これから目指す取り組みについて二社者様に伺いたいと思います。すでに具体的に始められている取り組みや、今後実現していきたいことなどはいかがでしょうか?採用において、ジョブローテーションや全国転勤に対しての学生のアレルギーを下げる目的の取り組みをお聞かせいただければと思います。
山城 山城
根本の仕組みとしてジョブローテーションをなくすことは考えていません。メリットもデメリットもありますが、やはり社員の成長に貢献するので残していきたいです。しかし、問題点としてキャリアの予測可能性がなさすぎるんですよね。私も今は人事にいますが、次の異動ではどんな仕事をするか、どこの土地へ行くのか分かりません。これまではその不安をカバーするために処遇をやや高く設定して守ってきたのですが、今の時代はそれも通用しません。やはりここを多少は担保する、見える化をしないと、これからの時代は耐えられないと思っています。当社ではいわゆるジョブ型採用にも以前から取り組んできました。スペックコースということで、保険会社特有のアクチュアリー(保険数理人)として数学のプロフェッショナルを募集したり、資産運用やIT職種などは20年程前からコースを設けています。それに加えて、これからはもっといろいろな職種についても一定程度、配属を確定するようなコースを増やさなければならないなと考えており、現在検討中です。
入社後も予測可能性の低さは変わらないので、さきほど3〜5年ペースとご紹介した異動の配属方針も、一定の予測ができるような世界を実現したいと思っています。
一方で、全国にある拠点をなくすことはできないので、そこに配属する人を確保しなければならないことも人事部にとっての難しい命題ですが、少なくとも同意のない転勤はなくそうと、人事部の中では話をしています。いつ実現できるかは分かりませんが、タスクフォース的に難しい課題に取り組み始めているところです。
岡野 岡野
なるほど、同意のない転勤ですね。新たな場所でポストが用意できれば、考える人もいるのでしょうね。
山城 山城
そうですね。しかし、たとえば子育て中の社員なら「子どもが小さいうちは転勤したくない」という人もいるでしょう。ポストと個人の事情をどう折り合いをつけていくかは非常に難しい命題ですね。採用を取り巻く世の中のニーズや環境は変わり続けていくので、「うちの会社も変えなきゃならんよ」と私も声を高くしているところです。世の中の流れをキャッチアップできるかどうかで今後の東京海上の採用力は変わると思うので、何とか実現したいと思っています。
岡野 岡野
続いて彦田様にも伺ってみたいと思います。御社の場合はキャリアジャーニーという取り組みもなさっているようですが、その辺りも具体的にお聞かせいただければなと思います。
彦田 彦田
先ほど山城さんも言われましたように、ジョブ型の採用というのが一つの大きなポイントになると思っています。LIXILではキャリアジャーニーというかたちで、自分のキャリアのハンドルを自分で握ることを推奨しています。これは、自分がどんなキャリアを歩みたいのかというだけでなく、どんな生き方をしたいのかにもつながる大きなテーマです。
そうしたことを踏まえて、学生さんにファーストキャリアを選んでもらうためには、入り口の用意が重要だと思っています。まだまだ「総合職」という大きな括りの入り口が中心になっているのが現実で、新卒一括採用主義の考えも大いに関係していると思っていますが、これを少しずつでも変えていくことが重要だと思います。
ファーストキャリアは、卒業してすぐに働くという選択肢だけではないと思うんです。たとえば、卒業して自分のやりたいことをやりながら数年後に就職するケースもあるでしょうし、「第二新卒」という言葉もあるように入社後の早い段階でミスマッチが起きて、次のキャリアを歩みたいという方も非常に多くいらっしゃる。そんな方々を含めて、LIXILとしてどうキャリアを設計するお手伝いがきるだろうかと考えています。ファーストキャリアの入り口を、ある意味広くするべき。どうフレキシブルに対応するかが、今後の大きな課題だと思っています。
岡野 岡野
採用人数が多い中、一人ひとりに寄り添って将来のキャリア設計に関する本心を入社前に引き出すことはかなり難しいと思いますが、いかがですか?
彦田 彦田
はい、非常に難しいと思っています。内定者全員と1対1で1時間程度の面談を行っていますが、たぶん本当はそれ以前に、選考中の段階から、キャリアについて考えてもらうべきだと思うのですが、現実的には非常に多くの方を選考するので難しいとも感じています。一方で、学生さんにはキャリア観を育成する機会が大学の授業やセミナーでもあるとは聞いてます。そこに企業として出向くのもよさそうですし、選考の段階でいろいろなキャリアを紹介したりアドバイスができるセミナーを、採用活動とは別にやっていくのも大きなポイントになるのかな、と思います。
山城 山城
学生さんへの伝え方が難しくないですか? 全国転勤があるけれども、人によっては10年1箇所にいる人もいれば、5年ぐらいで異動になる人も。どれがメインケースですか、と問われた場合はどうされるんですか?
彦田 彦田
そうですね、本当にリアルを伝えます。周りの人がどうなのかと、その人がどういう考えで残ってるのかをしっかり伝えるようにしています。私の知っている長年異動のない方は、結婚して子どもを産んで家も購入した方で、やっぱりその土地に残りたいという要望があって。ただ、私自身が10年間営業をやっていた中で5〜6人が途中で入ってきても私より先にどんどん異動する現状もありました。なので、「その方たちがどんなふうに異動したいと伝えていたよ」とか、「どういう考えだったよ」という部分を伝えています。実力次第なところもあるとは伝えていますが。
山城 山城
うちのエリアとグローバルも、同じような違いなのかもしれないですね。
岡野 岡野
「転勤可」を選択している学生でも、頻度が多いことに抵抗感を持っている場合はどのようにアプローチされていますか?
山城 山城
すべての移動が転居を伴う転勤ではなく、弊社の場合は東京to東京、東京to神奈川という異動もあります。そして、キャリアというのはそもそも自分で作るものだとお伝えします。会社に振り回されるものではなく、自分が置かれたどんな部門でもしっかり前を向いて活躍すれば、自分がやりたいことはできるし、必然的に希望が叶うから頑張って、と言っています。
岡野 岡野
東京海上さんではグローバルコースとエリアコースの併願もできるそうですね。グローバルコースを受けた学生が、選考途中や内々定の段階になってなぜ転勤を嫌がるのかと不思議に感じるご質問もありました。
山城 山城
学生さんもエントリー時点ではそこまで転勤をリアルに考えていないんです。「転勤があるとは言っても自分には関係ない」と根拠なく考えてしまいがちで。それが内定を受けてリアルに考えだすと、「あれ? そうじゃないじゃん」ということで辞退につながることもあるのかと。

社員の協力を得ながら、社会・市場の変化に対応することが重要

岡野 岡野
採用面接前に現場社員の方と面談を挟むとのことですが、社員の方々への協力の仰ぎ方で工夫していることはありますでしょうか。
彦田 彦田
事前に社員同士で面談をしてもらっています。社風を伝えることの難しさについて、社風がもっとも伝わるのは「社員同士の仲がいいかどうか」だというお話もありました。しかし、リクルーターは全国各地から集めるので、実は皆さん「はじめまして」なんですよね。そうなるとギクシャクして社風の魅力が伝わりにくいので、事前に集めて自己紹介してもらったり、何か共通項を探してもらったりして、学生と面談する前にリクルーター同士でアイスブレイクして、仲を深めてもらうんです。あとは、アサインの時点で仲の良い社員同士を集めることも。フラットな会話がしっかりできる人たちを集めるか、社員同士が人間関係を作ってから学生と面談してもらうよう心掛けています。
岡野 岡野
リクルーターの方には会社として評価はしてあげるんですか? たとえば手当や休暇がもらえるとか。
彦田 彦田
それが何もできていないのが現状です。非常にマインドの高い社員たちに協力してもらっているので、何かできないかとは常に思っています。社内SNSでグループを作って情報のやり取りをしているのですが、非公開にしているんですよね。五月雨式に複数の社員が「協力します」と手を挙げてくれたときに、何か担保できるのかという不安もあるので、ある程度人数は絞っています。
岡野 岡野
なるほど。今日はお二方ともありがとうございました。視聴者はお二方と同じく人事担当の方が多いと思いますが、メッセージをいただければと思います。
彦田 彦田
新卒採用も市場の変化が大きく、ファーストキャリアをどう選ぶかという観点に近付いていると思っております。もしかしたら、総合職と呼ばれる広い括りだけではなく、いろいろな手法を各社で考えながらやっている所もあるかもしれませんね。私共も学ばせていただきながら、学生がしっかりファーストキャリアを選べるように、キャリアの選択肢を作っていきたいと考えています。
また、どんなキャリアがあるかという紹介を含め、どんな体験ができるのかが重要になっていると思います。それを各社が伝えることで、しっかりマッチする学生を採用できるのではないでしょうか。採用だけでなく人事制度の部分も含めて、皆さんと一緒に市場をよりよいものにしていきたいと思います。
山城 山城
東京海上の一番の悩みである全国転勤に対して、社内では「全国転勤を受け入れる学生だけ採用すればいいじゃないか」といった声もあります。しかし、共働き比率が高まる今、会社が一方的に社命で転勤させる旧体制はマッチしないでしょうし、やはり会社が変わっていくしかないと思います。このように社会全体が変わっていくことで、採用が変わり、雇用が変わるのだと思います。そんな流れのなかで採用の入り口に立つ私たちは、会社の命運を分ける重要な役割を担っていると言えるのではないでしょうか。また皆さんといろいろなところでお話できればうれしいです。