採用活動
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「中途採用を成功に導く選考プロセスとは?|Voicy×Wiz」を開催しました

出演者

勝村 泰久 氏

株式会社Voicy
執行役員

勝村 泰久 氏

2020年にVoicyに入社。
VPoHRとして総務人事領域を管掌しつつ、メディア編成や事業開発も担当。
2021年2月より執行役員に就任。
キャリア教育やHRに関する学会公演・イベント登壇、大手企業の人事顧問や自治体の戦略顧問など、幅広く社会活動も行っている。

西田 優 氏

株式会社Wiz
HR事業本部 人事採用部
課長

西田 優 氏

2019年にIT総合商社である株式会社Wiz(ワイズ)に中途入社し、
人事未経験ながら採用企画課へ配属。
SNSを活用しながら採用戦略、採用企画、採用広報に従事。その後、エグゼクティブ層・クリエイティブ層といった採用にも携わり、現在は中途採用領域・障がい者雇用領域の責任者として兼務。

庄司 幸賢

株式会社ワークス・ジャパン
ITソリューション部 営業課

庄司 幸賢

中途採用に関して課題となっていること

庄司 庄司
最初に中途採用に関して、募集職種、ターゲット人材、採用活動における課題について伺いたいと思います。
勝村 勝村
当社では、2年前から年間20~30人を採用しています。半数がエンジニア、ほかにマーケティング、デザイン、セールス、管理部門など多様な職種で募集していて、今日現在33求人、1ポジション1名採用の予定です。採用チャネルについては、媒体とダイレクトリクルーティングの比率を高め、エージェントは補完的に利用させていただく形に変えてきました。課題はCX(Candidate Experience:候補者体験)を重視する流れへの対応です。採用候補者が価値を感じる体験をいかに提供できるか。また、中途採用を積極的に進めている大手に対して、私たちがどのように魅力を発信できるかというアトラクトの部分に課題があると感じています。
西田 西田
弊社の場合、アルバイトを含む人数ですが、年間50名前後の中途採用をしています。募集職種はDX商材の拡販があるので、toBとtoCどちらもセールス職種がメインとなっていて、その他、営業アシスタント、オンライン秘書、オンラインコンシェルジュのような在宅正社員に力を入れています。現在、約10職種の募集を出しています。昨年の実績では、30名入社した中で10名が在宅正社員です。弊社は創業10年目のベンチャーで、順調に成長して業界の中での認知度は高まってきましたが、一般の方にはまだまだ知られていません。一般の求職者に対する企業認知度の向上が課題です。

「採用狭報」、SNSの活用などナビサイトに依存しない形を模索

庄司 庄司
ここからは、お二方とディスカッションしていきながら、いつくかのテーマを深堀していきたいと思います。広報施策の観点で工夫されていることはありますか。
勝村 勝村
採用広報の部分では、どう期待値調整を図るかがすごく重要だと考えております。期待値がずれると基本的にはワークしないので、当社ではあえて辞退してもらうことも意識的にやっています。広報は「広く報じる」と書きます。当社のように、そもそも認知度がない50名にも満たないような会社では、まず知っていただくことは重要です。ただ、知ってもらった後に、狭く報じる狭報、いわば「採用狭報」ということも重要かもしれないと考えています。キャンディデイト・ジャーニー・マップみたいなものを作って、どのタイミングで誰に何を届けるのかを広報施策として構造化しています。初期段階では、カルチャーやビジョン、価値観に訴求するものをリアルな形で伝えて、「この会社で働きたい」と思ってもらえれば次に進んでいただく。一方、「こういう社風は合わない」と思った方には、その段階で辞退していただく。後半フェーズには、声で求人票を出してみるとか、具体的な職務をイメージさせるようなテキスト記事を出すなど、実際に現実感を持たせた上で、そこでやっていけるのかな、というところを意識した「採用狭報」の設計をしています。無駄な方に受けていただかない、お互いアンハッピーな状態を作らない、という考え方です。旧来の大手ナビサイトを通して、多くの人に受けてもらって多くの人を不採用にする、という採用活動のあり方は、非効率な上に大量のアンチを生みかねません。きちんと当社を理解していただき、「サービスはいいけれど、社風や職務が合わない」と感じた方には、本人から辞退していただき、アンチ感情を残さないといったところを意識してやっています。
西田 西田
勝村様の「狭報」というワードがすごく印象的でした。弊社は今、メインとして大手の有料媒体等を利用して、母集団形成に取り組んでいますが、将来的には直接求職者からWizの採用LP(ランディングページ)に応募いただける方が多くなってほしいと考えています。その一環として最近はSNSを利用した採用広報に力を入れています。主な媒体として、Twitter、Instagram、TikTok、Wantedlyを活用しています。InstagramやTikTokは若年層向けのツールと位置づけ、新卒の学生をターゲットとして発信しています。週2、3回の投稿で、会社の魅力やカルチャーの投稿に加えて、就活生にとってのお役立ち情報も投稿しています。また、直接SNS上で就活生とコミュニケーションを取る場として、インスタライブ等も行っています。TikTokはライブ告知、説明会等のエントリーの周知のほかに、実際の社員がオフィスでどのように働いているのか、1日の業務の流れを撮影した動画を流しています。この動画は人気コンテンツで、再生回数は約2万回です。Twitterについては、今弊社のHR事業本部のメンバーが15名ぐらいいますが、ほぼ全員がアカウントを持っていて、例えば新職種の募集が公開されると、一斉にTwitterで情報を発信します。
庄司 庄司
15名という規模感で体制作りが大変なのかなと思いましたが、発信の目的や内容について、体系立ててやっていらっしゃる形でしょうか。
西田 西田
やはり15名全員がSNS得意というわけではないので、苦手な方はSNSの扱いに慣れている若い方のやり方を真似てもらうところから始めています。新卒向けの話になりますが、新卒の方の場合、今はもう連絡のツールもLINEではなくてInstagramのDMでやるようなカルチャーになってきているので、使わない手はないなというのはあります。動画や実際の様子を発信できるのは、InstagramやTikTokのよさなので、そこは上手く活用しています。ライブ機能で質問をその場でいただき、それに答えることもあります。Voicy様はSNSへの取り組みをどのようにされていますか。
勝村 勝村
大企業ではSNSの活用自体が難しい会社さんも多いかなと思いますが、当社ではSNSの活用を推奨しています。例えば代表の緒方は、今Twitterで4万人くらいのフォロワーがいます。僕も1万人弱くらいいますし、そのくらいのメンバーは結構います。だから、SNSでの拡散は当然意識しています。ただ最近、SNSの使い方が上手な会社があって、それほどSNSのパワーがない社員が日常のことを小さく呟く。例えば「入社して半年たったけれど、こういうところは、本当にいい会社だなあ」といった形のものです。その呟きを社内のインフルエンサーが拾って、リツイートしていく。当社でもやってみていますが、一定の効果があります。既にインフルエンサーになっている社員が何か呟いても、見ている人が「どうせ取りつくろった情報でしょ」みたいに受け取られてしまう。でも、そこまでまだインフルエンス力がない社員が本音で呟いているものをしっかり拾って世に届けるみたいな方法は、新しい広報のスタイル。きちんとSNSやブログを活用して、自分たちのよいところ、あるいはなぜ入社したのか、といった情報のアウトプット・拡散をやったうえで、最近そういうちょっと新しい取り組みをしています。
西田 西田
なるほど、求職者からすると、リアルな声は一番聞きたいですよね。入る前の印象と入ってからのギャップみたいなところは、入ったばっかりのメンバーから聞きたいところだと思うので、それは参考にしたいなと思います。ありがとうございます。

ワークサンプルテストや適性診断でマッチングの見極めに注力

庄司 庄司
続いて二つ目のテーマに入ってまいります。応募者の方が選考に参加する段階で、繋ぎ止めの部分についてどのような工夫をされているのでしょうか。
勝村 勝村
繋ぎ止めるという観点は、今まさに課題です。この半年で競合となる会社の顔ぶれが変わってきました。スタートアップ企業と競っていたのが、上場している有名企業と競合することが増えてきたのです。期待値調整にウェイト置いていたのですが、繋ぎ止める力が弱いようで、アトラクトもやっていかないといけない。見極めという観点でいくと、当社はワークサンプルテストを必ず全職種で入れています。アウトプットの部分でいくと、エンジニアのコーディングスキルを見るなど専門職を除けば、そこで高いものが出てくることを期待しているわけではなくて、コミュニケーションの力を評価対象としています。実際に働く現場では、プライベートのコミュニケーション、デスクサイドの軽いコミュニケーション、仕事におけるワークコミュニケーションなどがあります。インターン期間のない日本の選考スタイルでは、なかなか評価できません。そこで、できるだけワークサンプルでそれが評価できる設計にして、メンバーとランチを取りながら軽くプライベートのコミュニケーションをするとか、ワークサンプル自体がコミュニケーションを取らないと作れないものにして、デスクサイドコミュニケーションを作るといった取り組みをしています。あと課題の発表タイミングでワークコミュニケーションの形を見るなど、コミュニケーションを構造化しています。本当にこの人は合っているのか、候補者側からは実際この会社でやっていけそうか、というところをお互いに確認できる形にしているところが選考の特徴です。
庄司 庄司
選考フェーズのどのタイミングにワークサンプルテストを入れているのですか。
勝村 勝村
最終の段階です。初期選考はオンラインで2回やって、そこはスピード重視です。ただ、最終選考は直接会うことを重視していて、必ず対面で会って、ワークサンプルテストも入れるので、3~6時間の拘束で、大変なものにはなっています。
庄司 庄司
ワークサンプルの評価は、現場の事業部の方がやっていらっしゃるのですか。
勝村 勝村
アウトプットやプロセスの部分から感じたことについては、そこに関わったメンバーが評価をします。ただ採用するかどうかについては、『ビジョナリー・カンパニー2』の「誰バス理論」*1みたいなところを重視していて、全員が合意するプロセスを作っています。新人を採用すると、配属された現場で「誰が採ったのか」とクレームを言う人が出てくることがありますよね。それをなくすために、選考に関わった全員に責任がある形にしているわけです。だから、一人でも反対する人がいれば、採用を見送ります。

*1 誰バス理論
アメリカのビジネス・コンサルタント、ジム・コリンズの著書『ビジョナリー・カンパニー2』(日経BP)に登場する「誰をバスに乗せるか」に由来する。コリンズは採用をバスの旅にたとえた。成長した企業は、バスの目的地を決めて旅をする人を乗せたのではなく、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうのかを決めているとコリンズは指摘している。「何をやるか」ではなく「誰をバスに乗せるのか」が企業の成長にとって大切となるという考え方である。
庄司 庄司
面白いですね。西田様にも同じ質問にはなりますが、選考途中の工夫点はありますか。
西田 西田
繋ぎ止めについては、弊社も同じ課題を持っています。弊社もベンチャーなので、まだまだアップデートしないといけないことが多々あります。そこで、ある程度腹をくくって入っていただいて、かつ楽しみながら仕事をしてもらえないと、結果的に早期退職に繋がります。選考中の工夫点としては、弊社の場合、企業にとっても、求職者にとっても幸せな採用に繋がるようにということで、双方向にとってのマッチングを重要視しています。適性診断を用いて、活躍をしていただけそうかどうかの見極めを図っています。また、弊社では通常3次選考で代表の面接があります。ただ、代表の一存で内定という形ではなく、例えば現場の責任者や、それ以外の第1階層取締役陣との面談を複数回重ねて、その上でマッチングを見極めています。

「ダイレクトリクルーティング・リファラル・再入社」など多彩な採用手法

庄司 庄司
では次のテーマ。中途採用をどのように強化していくのか、その方針と具体的な施策についてお伺いできればと考えています。
勝村 勝村
今後の中途採用のポイントとして当社が意識していきたいのは、ダイレクトリクルーティングとリファラルの強化です。優秀な人は今、ダイレクトリクルーティングが多い印象があります。サービスに登録したあとに、一斉送信ではなく、一人ひとりに対して手紙を書く形で、きちんと文章にもこだわってアプローチしています。すぐに転職を考えていない人に対してもスカウトメールを丁寧に送ってまず接点を持ち、半年、1年かけて採用に繋げることがあります。もう一つはリファラル採用で、これはいちばん優秀な人にタッチできます。優秀な人たちは外部のサービス機関に頼る必要がなく、近い距離感で誘われて転職しているわけです。そういう人たちは、採用市場にそもそも出て来ないので、そこの部分にタッチできれば、優秀な人たちを採用できると考えています。リファラルは、紹介してと言ってもみんなが紹介してくれるわけではありません。インセンティブも、外資系などそれが機能する社風の会社しか機能しません。当社の場合、現場単位、各チーム単位でリファラルチームを作って、そのトップが裁量と責任を持ってコミュニケーションを取ります。そこに対して事業責任者にはKPIと評価目標も付けます。ただし、現場には付けません。リファラルは友達の紹介だと思いがちですが、あくまでも自分から優秀な方に対してアプローチをして採用する行為であって、単なる知人の紹介ではありません。この認識をしっかり持たせた上で、TwitterDMとか、直接的に知り合いの知り合いに声かけるとか、イベントで声かけるとか、そういう何か能動的にタッチするような行動をとってもらっています。
西田 西田
弊社では大手のナビ媒体をメインとしなくてもいいように成長していきたいと考えています。母集団形成の一環としては、SNSからの応募も増やしていくと同時に、リファラルとか、あとは最近トレンドの再入社という方法にも手をつけていきたい。弊社のリファラルの体制では、全従業員に対してKPIを負わせるようなことはありませんが、中途入社のメンバーについては、入社時に「今日からあなたはリクルーターですよ」という形で、会社のカルチャーとインセンティブが発生することを説明しています。
庄司 庄司
勝村様、再入社について御社としては何か取り組みがありますか。
勝村 勝村
僕らもアルムナイ(退職者)ネットワークを構築しないといけないと思っています。当社の場合、僕の入社前の退職者がアンチになって辞めていたので、アルムナイネットワークを作っても意味がないと思っていました。ただ、今組織状態がすごくいいので退職理由もほとんどが起業か、よりベンチャーに行きたいとか、そういう理由になってきていて、総じてポジティブです。そういうメンバーなら、アルムナイネットワークを構築していれば、再入社の可能性もあるし、誰かを紹介してくれる可能性もあります。当社で言えばBtoCサービスなので、ファンであり続けてくれる可能性もあるので、年に1、2回集まるような仕組みを構築する必要性はあると思って、まさに最近サーチをしていたところです。
西田 西田
あと近いところで、タレントプールがあります。今回このタイミングでは残念ながら弊社を選んでいただけなかったという方でも、タイミングが違えば、振り向いてくれるかもしれません。そういった方々をプールして、定期的にご連絡をしていくのもいいのかなと考えています。
庄司 庄司
もう少しいろいろお聞きしたいところですが、あっという間の1時間でした。ここでトークセッションは締めさせていただければと思います。ありがとうございました。