採用活動

採用の歩留まりとは?意味・計算方法・平均値・改善策をわかりやすく解説

採用活動における「歩留まり」とは、各選考段階で次のステップに進んだ候補者の割合を示す指標です。
この歩留まりの意味を正しく理解し、自社の数値を平均と比較・分析することで、採用プロセスの課題が明確になります。

歩留まり率が低い箇所を特定し、適切な改善策を講じることが、採用目標の達成には不可欠です。
この記事では、歩留まりの計算方法から原因分析、具体的な改善施策までを網羅的に解説します。

採用における歩留まりとは各選考段階の通過率のこと



採用活動における「歩留まり」とは、各選考段階において次のステップに進んだ候補者の割合を示す重要な指標を意味します。
この数値は、応募から内定承諾までの各フェーズで、どの程度の人材が次の選考に進んでいるかを表します。

歩留まりを把握することは、自社の採用活動のどの部分に課題があるのかを明確にし、改善点を見つける上で不可欠です。
例えば、書類選考の歩留まりが低い場合、求人情報の訴求力に問題がある可能性が考えられます。
また、内定辞退が多い場合は、入社後のフォロー体制や企業魅力の伝え方に改善の余地があることを示しています。この指標を分析することで、効率的かつ効果的な採用活動が可能になります。

採用歩留まり率の計算方法と各選考フェーズの平均値


採用の歩留まり率を正確に把握することは、採用活動の効率化と成功に直結します。
まずは自社の各選考フェーズにおける歩留まり率を計算し、現状を数値で可視化することが第一歩です。

算出した数値を一般的な平均値と比較することで、自社の採用プロセスにおける課題がどの段階にあるのかを客観的に評価できます。
この比較分析を通じて、優先的に改善すべきポイントが明確になり、より効果的な対策を立てることが可能になります。

各選考段階の歩留まり率を計算する基本の式

採用における各選考段階の歩留まり率は、特定の計算式を用いて算出します。
基本の式は「(次の選考への進出者数÷当該選考の応募者数)×100」です。
例えば、書類選考の応募者が100名で、通過して一次面接に進んだのが30名だった場合、書類選考の歩留まり率は(30÷100)×100=30%と計算されます。

同様に、一次面接参加者が30名で二次面接進出者が15名なら、一次面接の歩留まり率は50%となります。この計算を応募から内定承諾までの全フェーズで行い、どの段階で候補者が離脱しているのかを特定します。

【新卒・中途別】採用歩留まり率の平均値

採用歩留まり率の平均値は、新卒採用と中途採用で大きく異なります。

新卒採用の場合、内定承諾率は平均で50%前後、選考全体での歩留まり率は1〜1.5%ほどが目安とされています。また、従業員規模による内定承諾率の大きな差は見られない傾向があります。

一方、中途採用の場合、転職エージェント経由での内定率は約4%〜5%が平均値です。
内定承諾率は新卒採用よりも高く、91.2%というデータもあります。
中途採用は、目指す企業や職種が明確な候補者が多いため、新卒採用と比較して内定承諾率が高くなる傾向が見られます。

[参考] 内定獲得時期や内定承諾理由を聞いた 「26卒学生調査結果」はこちら

採用の歩留まり率が低下してしまう主な3つの原因


採用の歩留まり率が低い場合、その背景には必ず何らかの原因が潜んでいます。
特に新卒採用や中途採用の市場が売り手市場化している状況では、候補者は複数の選択肢を持っているため、少しでも懸念点があれば容易に選考を辞退します。

歩留まり率の低下は、採用コストの増大や採用計画の未達に直結するため、原因を正しく特定し、迅速に対処することが不可欠です。

ここでは、歩留まり率低下につながる代表的な3つの原因を解説します。

【原因1】他社より選考スピードが遅く候補者を惹きつけられない

選考スピードの遅さは、候補者の離脱を引き起こす主要な原因の一つです。
特に優秀な人材ほど複数の企業からアプローチを受けており、選考結果の連絡が遅れたり、次の面接日程がなかなか決まらなかったりすると、他社の選考を優先してしまいます。

候補者は企業の対応速度から、入社後の意思決定スピードや社員への配慮を推し量るものです。
書類選考の合否連絡に1週間以上かかる、面接後のフィードバックが遅いといった状況は、候補者の志望度を著しく低下させます。
採用活動においては、競合他社に先んじて候補者との関係を構築する意識が求められます。

【原因2】求人情報と面接で伝える内容に一貫性がない

求人情報と面接で候補者に伝える情報に齟齬があると、候補者は企業に対して不信感を抱き、選考辞退につながります。
例えば、募集要項では魅力的な仕事内容をアピールしていたにもかかわらず、面接では地味な業務が多いと説明されたり、提示された給与や待遇が求人情報と異なったりするケースが典型例です。
こうした情報の不一致は、候補者に「話が違う」と感じさせ、入社後のミスマッチを懸念させます。

採用活動に関わる全部門で情報共有を徹底し、一貫性のあるメッセージを発信することが、候補者との信頼関係を築く上で非常に重要です。

【原因3】候補者の入社意欲を高めるフォローができていない

選考プロセスは、企業が候補者を選別する場であると同時に、候補者が企業を見極める場でもあります。
面接官の態度が高圧的であったり、候補者からの質問に真摯に答えなかったりすると、候補者の入社意欲は大きく損なわれます。
また、選考が進む中で、候補者が抱える不安や疑問を解消するためのフォローが不足している場合も、志望度の低下を招きます。

自社で働くことの魅力を伝え、候補者一人ひとりに寄り添う姿勢を見せるなどの動機付けがなければ、内定を出しても承諾には至りにくいでしょう。丁寧なフォロー活動は、歩留まり改善に不可欠な要素です。

要注意!特に歩留まりが低下しやすい2つの選考タイミング


採用プロセスには、候補者の離脱、すなわち歩留まりの低下が起こりやすい特定のタイミングが存在します。
これらの「魔のフェーズ」を事前に把握し、対策を講じることは、新卒・中途採用を問わず、採用成功率を高める上で極めて重要です。

多くの企業が課題として挙げるのが、選考の初期段階と最終段階です。
ここでは、特に歩留まりが低下しやすい2つのタイミングに焦点を当て、その背景と注意点を解説します。

【タイミング1】書類選考から面接に進む段階

書類選考を通過したにもかかわらず、面接に進む段階で辞退が発生するケースは少なくありません。
この主な原因は、企業側の対応の遅れです。
書類選考通過の連絡が遅かったり、面接日程の調整に時間がかかったりすると、候補者はその間に他社の選考に進んでしまいます。

応募者は複数の採用活動を並行して進めていることを常に念頭に置くべきです。
この段階での離脱を防ぐには、書類選考後2〜3営業日以内に連絡を取る、複数の面接候補日を提示するなど、迅速かつ柔軟な対応が求められます。
応募への感謝を伝え、面接で会えることを楽しみにしていると伝える一言も効果的です。

【タイミング2】内定を出してから承諾を得るまでの段階

内定通知後から承諾を得るまでの期間は、歩留まりが最も低下しやすいタイミングの一つです。
候補者は、本当にこの企業で良いのか、他社の方が魅力的なのではないかと、いわゆる「内定ブルー」に陥ることがあります。

特に複数の内定を保持している場合、給与や待遇だけでなく、社風や将来性など様々な要素を比較検討しています。
この重要な時期に企業側からのフォローが途絶えると、候補者の不安や疑問は増大し、内定辞退につながりやすくなります。
定期的な連絡や、現場社員との面談を設定するなど、入社意欲を高めるための積極的なフォロー活動が不可欠です。

採用の歩留まりを改善するための5つの具体的な施策


採用の歩留まり率が低い原因を特定できたら、次はその課題を解決するための具体的な施策を実行に移す必要があります。
歩留まりの改善は、単一の施策で実現するものではなく、募集から内定承諾までのプロセス全体を見直し、候補者体験(候補者が選考過程で得る体験)を向上させる視点が不可欠です。

ここでは、各選考フェーズで実践可能な、歩留まりを改善するための5つの具体的な施策を紹介します。
自社の状況に合わせて取り組むことで、採用成果の向上を図ります。

【施策1】選考プロセスを見直し連絡や意思決定を迅速化する

選考スピードの遅延は歩留まり低下の直接的な原因となるため、プロセスの見直しによる迅速化は最優先で取り組むべき改善策です。
まず、応募から内定までの各ステップにかかっている日数を可視化し、どこに時間がかかっているのかボトルネックを特定します。
例えば、書類選考の承認フローが複雑、面接官のスケジュール調整が難航しているなどの課題が考えられます。

対策として、選考ステップの簡略化、オンライン面接の活用、合否連絡期限の社内ルール設定などが有効です。意思決定を速める体制を構築することが、機会損失を防ぎ、歩留まりの改善につながります。

【施策2】候補者の視点に立って募集要項や採用サイトを改善する

募集段階でのミスマッチは、その後の選考辞退や内定辞退の大きな原因となります。
これを防ぐためには、候補者の視点に立って募集要項や採用サイトの情報を見直す改善が必要です。
求めるスキルや経験といった企業側の要望だけでなく、候補者が知りたいであろう「入社後に得られる経験」「キャリアパス」「チームの雰囲気」「企業の課題」といった情報を具体的に記載します。

社員インタビューや一日の仕事の流れを紹介するコンテンツも、働くイメージを掴む助けとなります。
自社に本当にマッチする人材からの応募を増やすことが、結果的に歩留まり全体の改善に貢献します。

[関連] 大手企業がどのように採用広報施策を作っているのかを学べる セミナーアーカイブはこちら

【施策3】面接官のスキルアップと柔軟な面接方法で満足度を高める

面接官の印象は、候補者の入社意欲を大きく左右します。
面接官のスキルアップは歩留まり改善において重要な施策です。
面接官トレーニングを実施し、質問スキルや候補者の本音を引き出す傾聴力、企業の魅力を伝える方法などを習得させます。
評価基準を統一し、面接官による評価のばらつきをなくすことも不可欠です。

候補者の都合に合わせたオンライン面接や、業務時間外の面接設定など、柔軟な選考方法を取り入れることで、候補者の満足度を高めることができます。
こうした取り組みが、候補者体験の改善に直結します。

【施策4】面接や面談を通じて候補者の入社意欲を醸成する

面接を単なる評価の場ではなく、候補者の入社意欲を高める「動機付け」の機会と捉え直すことが、歩留まりの改善に有効です。候補者のキャリアビジョンや価値観を深く理解し、自社で働くことでそれらがどのように実現できるのかを具体的に示します。
一方的に質問するだけでなく、候補者からの質問時間を十分に確保し、真摯に回答する姿勢が信頼関係を築きます。

また、選考途中で現場の社員と話すカジュアルな面談の機会を設けることも効果的です。
仕事のやりがいやチームの雰囲気をリアルに伝えることで、候補者の入社後のイメージを膨らませます。

【施策5】内定者との定期的なコミュニケーションで不安を解消する

内定通知後から入社までの期間、内定者とのコミュニケーションを密に取ることは、内定辞退を防ぐための重要な改善策です。内定者懇親会や現場社員との座談会、社内イベントへの招待などを企画し、定期的な接点を設けます。
これにより、内定者は入社前に社内の雰囲気を知ることができ、同期や先輩社員との関係を築くことで帰属意識が高まります。

また、人事担当者から定期的に連絡を取り、入社手続きに関する質問に答えたり、近況をヒアリングしたりすることも、内定者の不安を解消し、安心感を与える上で効果的です。
丁寧なフォローが入社への橋渡しとなります。

まとめ



採用における歩留まりとは、各選考フローにおける通過率を意味し、採用活動の健全性を示す重要な指標です。
歩留まりを正しく理解し、自社の数値を計算して平均と比較することで、採用プロセスのどこに課題があるのかを客観的に把握できます。

歩留まりが低下する原因には、選考スピードの遅さや候補者フォローの不足など、様々な要因が考えられます。
本記事で解説した具体的な改善策を参考に、自社の採用プロセスを見直し、候補者一人ひとりと真摯に向き合うことが、採用成功につながります。
継続的な分析と改善を繰り返すことが重要です。